はじめに
犬でも、猫でも膀胱結石の症例は比較的よく見られます。
膀胱結石は代表的なものは、リン酸アンモニウムマグネシウム(スロルバイト)を始め、シュウ酸カルシウム、シスチン、尿酸アンモニウムといったものが挙げられます。頻度は少ないですが、その他にはリン酸カルシウム、シリカ、尿酸炎、キサンチンなどが挙げられます。
症状は
病院に来院する時は、明らかな症状を発現していることがほとんどです。
例えば、
- おしっこが臭う。
- おしっこが近くなった。
- おしっこが赤くなった。
- おしっこが出ない・・・(これはヤバそう・・・)
などです。
膀胱結石の診断は
- レントゲン撮影(腹部の単純レントゲン検査場合によって造影検査)
- 腹部エコー検査
などで行います。また、
膀胱結石の種類を特定する為の検査は
- 尿検査での結晶成分の検出
- 結石の分析(偶然に尿から得られる場合もありますし、手術などで採取してから検査を行う場合もあります。)
治療方法は
結石の種類や大きさによって変わりますが、食事によって溶かしたり、外科手術を行って摘出したり、(ケースはかなり限られますが)用手で排泄させてしまう場合もあります。
今回の患者さん
ウエルシュ コーギーの8歳の男の子のワンちゃんです。
来院時は尿が出にくそうということでした。(ぽたぽた出る。)加えて嘔吐もあり、食欲が廃絶していました。
そこで、腹部の単純レントゲン撮影と尿カテーテルを挿入し、尿道閉塞の有無を確認しながら採尿後に尿検査を行いました。
腹部単純レントゲン検査
写真1(6039)
写真2(6040)
膀胱の拡大と膀胱内にレントゲンを透過しない結石を疑わせる陰影が認められます。
前立腺も腫れているみたいです。
尿検査
尿検査ではストルバイト結晶が得られました。
よって、膀胱内の結石はストルバイトである可能性が高く、同時に尿路感染(細菌性の膀胱炎)を起こしている可能性が示唆されました。前立腺も腫れていましたので、炎症の波及が前立腺にも及んでいる可能性があります。
追加検査(尿培養試験)
尿路感染を強く疑いましたので、尿培養試験を行いました。
結果は陰性で、検査では細菌の検出はできませんでした。
尿路感染の原因菌の特定はできませんでした。
治療方法
- 抗生物質(エンロフロキサシン)
- 非ステロイド消炎鎮痛剤(メロキシカム)
- 療法食の開始(ヒルズs/d)
患者さんの変化
腹部単純レントゲン検査(6日後)
写真3(8327)
膀胱の拡大が無くなっているので、結石は少なくなったようにも思えますが、まだ何とも言えません。
この時点で、再度尿が出なかったら、膀胱切開による結石の摘出と前立腺肥大の治療として去勢手術を提案致しました。
よほど手術が嫌だったらしく・・・:
腹部単純レントゲン検査(3週間後)
写真4(8330)
最初のレントゲン写真よりも大分結石の量が減ったように感じます。
前立腺は腫れています。
この当時は内科療法(抗生物質の投与、結石溶解の為の食事)は継続中でした。
腹部単純レントゲン写真:(6週間後)
写真5(8332)
レントゲン写真上では結石は消失しています。
腹部エコー検査:(9週間後)
写真はないのですが・・・
腹部エコー検査を実施しても結石を認めませんでしたので、結石溶解用の療法食はいったん中断し、ストルバイト結石予防用の療法食へと変更致しました。
腹部単純レントゲン検査:(定期検診時 6ヶ月後)
写真6(8335)
定期検診時でも結石を認めませんので、ストルバイト予防用の療法食がよく効いているのだと思います。
前立腺がまだ腫れているので、早めに去勢手術をしないと行けません。
最後に
膀胱結石の症例は大変多く見られます。
結石が形成される原因も様々ですし
形成される結石の種類も様々です。
結石に対する治療方法はケースバイケースとなりますので
すべての膀胱結石が食事のよって溶解するわけではありません。
また、このワンちゃんも当初は尿が出にくくなっておりましたので、尿道内へ結石が侵入していた可能性もあります。
この時は尿道カテーテルの挿入により整復されましたが・・・
結果的にはストルバイト溶解用の食事で溶かすことができたので、本当によかったと思います。