3.考察
考察 1
本症例のIBD発症原因は?
- 腸管には他臓器と比較して消化管関連リンパ組織(GALT)で知られる多数の免疫細胞がある。
- GALTは無害な食物や細菌抗原へのトレランス(免疫寛容)を維持しながら病原体から腸管を守る役割を果たしている。
- 発症理由としては、持続的な異常刺激に対する生体の適切な反応の結果、あるいは正常な刺激に対する生体の持続的な異常反応の結果とされる。
- 刺激因子としては粘膜の免疫反応の欠損、膜透過性の変化、食事の影響および腸内微生物が挙げられる。
考察 2
刺激因子?
- 穿孔部に認められた毛球、テープ片?
IBDにより異常をきたした消化管運動に対して更なる刺激因子となり腸穿孔を引き起こした可能性がある。 - 食事アレルギー?
参考として血清IgE検査を行った。結果は米、七面鳥、シーフードミックス、玄米、イワシ、サケに対して陽性反応を示した。食事アレルギーの関与は疑われるが、さらに検討が必要。 - Helicobacter感染?
内視鏡バイオプシーによる病理検査では胃内のHelicobacter属の感染が強く疑われるが胃粘膜面の組織反応が明瞭に認められないことから刺激因子としての可能性は不明。但しHelicobacter感染とリンパ球ープラズマ細胞性胃炎との関係が疑われる記述あり。
考察 3
内視鏡検査の有用性
- 利点
IBDの診断、治療経過の確認には有用。
非侵襲的な方法で胃や十二指腸の形態変化を評価し病変部位を直接バイオプシーできる。 - 欠点
検査費用の問題があり頻回の実施は困難。
バイオプシーが粘膜面に限定される。加えて空回腸まで到達できない等の理由もあり診断に疑問が残る場合は開腹して全層性にバイオプシーした方がよい。
考察 4
IBDの分類
- IBDの組織学的分類。
(すべての細胞系が存在するのでどの細胞系が優位かで以下に名付けられる。)
リンパ球形質細胞性IBD
好酸球性IBD
化膿性IBD
肉芽腫性(貫壁性)(限局性)IBD - 本症例の罹患状態。
内視鏡検査の結果から判断して、IBDの罹患部位が回腸に限定されていた可能性と当初は広範囲に罹患があったものの内科治療により病変が消失していた可能性がある。
症例は回腸穿孔をおこす以前にも消化器症状を認めていた。早期に検査を実施することにより本疾患を診断治療ができた可能性がある。